足のむくみ、放置は危険?
「むくみ」とは、皮膚やその下の組織に、何らかの原因で水分が溜まった状態を指します。
血液中の水分が、血管の外に異常に染み出した状態です。
足のむくみの原因は様々です。
運動不足や長時間同じ姿勢を続けることでも生じますし、貧血、心臓病、腎臓病、肝臓病といった、足以外の病気が原因となることもあります。
足の病気では、下肢静脈瘤や深部静脈血栓症などによって起こる場合があります。
むくみは、放置してよいものから命に関わるものまで、様々な原因で起こりえます。
足のむくみを診察してもらったことがない方は、一度当院にご相談ください。
足のむくみの原因と
考えられる病気
病気が原因の場合
心不全
心不全は、心臓が正常に機能せず、体に必要な血液を送り出せなくなる状態です。
心臓のポンプ機能が低下すると、血液の循環が悪くなり、体内の水分が滞ってしまうため、むくみが生じます。
特に、足や足首がむくみやすい傾向があります。
肝不全・腎不全
肝不全や腎不全では、体内の水分や塩分のバランスが乱れ、むくみが生じることがあります。
肝臓が正常に機能しないと、水分や塩分がうまく排出されずに体内に溜まってしまいます。
同様に、腎臓の機能が低下した場合も、余分な水分や塩分が排泄されずに体内に溜まります。
そのため、足や足首、手や顔などにむくみが現れます。
甲状腺機能低下
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンが十分に作られず、代謝が低下する病気です。
代謝が遅くなると、体内の水分や塩分のバランスが乱れ、むくみが生じることがあります。
特に、顔、手、足などがむくみやすい傾向があります。
リンパ浮腫
リンパ浮腫は、全身を流れるリンパ液の循環が何らかの原因で阻害され、腕や足にむくみが生じる病気です。がん手術後によくみられます。
乳がん、子宮がん、大腸がんなどのがん手術では、がんの転移を防ぐため、放射線治療やリンパ節の切除が行われます。しかし、この際にリンパ管が傷つけられ、リンパ浮腫が起きる場合があります。
また、がん治療とは無関係に、原因が特定できない特発性リンパ浮腫も存在します。
リンパ浮腫は自然に治癒することはなく、症状が急激に悪化し、熱や痛みを伴う急性リンパ管炎に移行することもあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
下肢静脈瘤
足の静脈にある静脈弁は、血液が心臓に戻るのを助け、逆流を防ぐ役割を担っています。
この静脈弁が正常に機能しなくなると、血液が逆流して足に溜まり、むくみが生じます。
これが下肢静脈瘤です。
超音波検査によって、下肢静脈瘤かどうかを容易に診断できます。
深部静脈血栓症
深部静脈血栓症は、足の深いところにある静脈に血の塊(血栓)ができ、血流が滞る病気です。
血栓によって静脈が詰まると、血液や水分が滞り、むくみが生じます。
特に、足や脚がむくみやすい傾向があります。
深部静脈血栓症のリスク因子としては、長時間座り続けることや寝たきり、手術後、妊娠などが挙げられます。
予防と治療には、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)、血行促進のための適度な運動、圧迫ストッキングの着用などが有効です。
早期の診断と治療が重要となるため、医師の指示に従い適切な対策をとりましょう。
病気以外が原因の場合
長時間同じ姿勢を続けると、足の動きが減り、ふくらはぎの筋肉によるポンプ機能が低下します。
ふくらはぎの筋肉は、収縮することで血液を心臓に戻すポンプのような役割を担っており、様々な要因でむくみが生じます。
運動不足
運動不足によって筋力が低下すると、むくみが生じやすくなります。
筋肉は、血液や体液を循環させるポンプのような役割も担っています。
運動不足や筋力低下により筋肉が十分に働かなくなると、血液や体液の循環が滞り、組織に余分な水分や塩分が溜まりやすくなるため、むくみが生じてしまうのです。
特に、足や足首にむくみが現れやすい傾向があります。
適度な運動を行い、筋力を維持することで、血液や体液の循環を促し、むくみを予防することができます。
日常生活の中でこまめに体を動かしたり、ストレッチやウォーキングなどの運動習慣を取り入れるようにしましょう。
栄養不足
ビタミン、ミネラル、タンパク質などの栄養素が不足すると、むくみが生じやすくなることがあります。
これらの栄養素は、体内のバランスを保ち、細胞の働きや体内の水分量を調整する役割を担っています。
栄養素が不足すると、細胞や組織がうまく働かなくなり、水分や塩分が体に溜まりやすくなってしまうのです。
特に、タンパク質不足は、むくみのリスクを高めます。
バランスの取れた食事や栄養補給を心がけ、むくみを予防しましょう。
ビタミン、ミネラル、タンパク質を十分に含む食材を積極的に摂取し、様々な食品を食べるようにしてください。
女性特有のむくみ
女性の場合、月経周期や妊娠、更年期など、ホルモンバランスの変化によってむくみが起きやすくなります。体内の水分バランスが乱れ、特に、下半身や足のむくみが目立ちます。
また、一般的に女性は男性よりも体脂肪が多く、そのことが水分を溜め込みやすくしている要因の一つと考えられています。
むくみの予防として、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレッチ、水分摂取量の調整などを心がけましょう。
特に、生理前や妊娠中は、姿勢や生活習慣に気を配ることが大切です。
過剰な飲酒
アルコールの飲み過ぎは、むくみの原因になることがあります。
アルコールには利尿作用があり、過剰に摂取すると体内の水分が過剰に排出されてしまいます。
その結果、体内の水分バランスが乱れ、組織に余分な水分が溜まりやすくなり、むくみが生じてしまうのです。
特に、顔や手足がむくみやすい傾向があります。
アルコールの摂取量を控えるとともに、水分補給を心がけることが、むくみの予防につながります。
健康的な飲酒を心がけ、バランスの取れた生活習慣を送りましょう。
姿勢
(デスクワークや立ち仕事)
立ち仕事やデスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、ふくらはぎの動きが減り、筋肉のポンプ機能が低下します。
その結果、血液が心臓に戻りにくくなり、むくみが生じます。
このようなむくみを放置すると、下肢静脈瘤に進行するリスクが高まるため注意が必要です。
危険なむくみの見分け方
むくみが数日間続く場合、病気が隠れている可能性があります。
「むくみが何日も引かない」「指で押してもへこみがなかなか戻らない」「コブのようなものや細い血管が見える」といった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- 一日中むくんでいる
- 足の血管がコブのように浮き出ている
- むくみだけでなく、だるさや痛みもある
- 急な体重増加
- 顔、まぶたにむくみがある
- 尿の量が少ない、または回数が減った
- 坂道や階段で息切れがする
- 疲れやすい
特に、上記のような症状がある場合は、心不全など、緊急に治療が必要な病気の可能性もあるため、受診をしましょう。
足のむくみの治療方法
むくみの原因が心臓病や腎臓病、下肢静脈瘤などの病気の場合は、まずその病気に対する治療を優先します。
その上で、むくみを軽減するために、利尿剤などの薬物療法や、弾性ストッキングを使った圧迫療法などを行います。また、自宅で毎日続けられるマッサージやストレッチの指導も行います。
さらに、食生活や運動習慣など、生活習慣の改善が必要な場合は、そのためのアドバイスも行います。
自分でできる足のむくみを
取る方法
むくみは、病気などが原因でない場合は自然に改善しますが、症状が気になる場合は、以下の方法を試してみてください。
足のむくみを改善方法
むくみは、血液やリンパ液などの体液が滞ることが原因で起こります。
そのため、むくみの解消には、ストレッチが効果的です。
むくみやすい足の場合、膝の曲げ伸ばし、足首回し、つま先立ちでのかかと上げ下げのようなストレッチを行いましょう。
これらのストレッチによって、凝り固まった筋肉や関節をほぐし、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用を促進することで、むくみの改善につながります。また、手でマッサージするのも効果的です。
心臓の遠い部分から近い部分に向けて、足首やひざの裏、足の付け根など、むくみやすい箇所を重点的に行いましょう。
その他、下肢を挙げる、体を温める、カリウムを多く含む食品を摂取することも有効です。
ただし、腎機能が低下している場合は、医師に相談してから摂取するようにしてください。
顔のむくみの改善方法
朝起きて顔がむくんでいる場合は、冷水と温水で交互に顔を洗うと効果的です。
血管が収縮と拡張を繰り返すことで、むくみが解消されます。また、ホットタオルで顔を温めるのも効果的です。
水で濡らして絞ったタオルを電子レンジで1分ほど温めたものを使用します。
顔の血行が促進され、むくみが解消されやすくなります。その他、マッサージも効果的です。
鎖骨や首の周りのリンパ節を刺激することで、顔のむくみを改善することができます。
毎日のスキンケアと合わせて行い、むくみを予防しましょう。