息切れ(呼吸困難)とは
「呼吸困難」とは、呼吸をする際に、何らかの不快感を伴う状態を指します。
呼吸をコントロールする脳の呼吸中枢からの指令と、気道や肺の感覚、血液中の酸素や二酸化炭素の濃度などがうまくかみ合わなくなると、脳が異常を感知し、私たちは息苦しさを感じます。
息切れ、息苦しさ、呼吸がしにくい、空気が入ってこない、酸素が足りない感じがするなど、症状の感じ方や表現は人それぞれです。
激しい運動をした後に息切れするのは、生理的な反応であり、通常は安静にすれば自然と治まります。
しかし、安静時にもかかわらず呼吸困難が起こる場合や、以前は問題なくできていた運動で症状が出るようになった場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
特に、「苦しくて横になれない」「座ると呼吸が楽になる」といった場合は、注意が必要です。
また、呼吸困難に加えて、胸の痛み、喉の痛み、嘔吐、冷や汗、声のかすれ、チアノーゼ(唇や指先が青紫色になる)などの症状がみられる場合は、命に関わる危険な状態であることも考えられます。
少しでも異常を感じたら、ためらわずに医療機関を受診しましょう。
この息切れは病気のサイン?
症状チェック
激しい運動をした時に息切れするのは自然な体の反応ですが、日常生活の中で息切れを感じることが多くなった場合は注意が必要です。
特に、下記のような症状がある場合は、一度当院呼吸器科にご相談ください。
下に挙げた項目に当てはまるほど、息切れが重症化している可能性があります。
- 早足で歩いたり、緩やかな坂道を上ると息切れがする
- 駅の階段の上り下りで息切れがする
- 同年代の人と一緒に歩いていて、自分だけ息切れがしてついていけない
- 平坦な道を100メートル歩くと息切れがする
- 平坦な道を数分歩くと息切れがする
- 息切れがひどくて外出できない
- 服を着替えるだけで息切れがする
息切れの原因はストレスかも?
血液は、肺で全身から回収した二酸化炭素を排出すると同時に、酸素を取り込みます。
酸素を豊富に含んだ血液は、心臓から全身に送り出され、細胞に酸素を供給し、代わりに二酸化炭素を回収します。
しかし、酸素供給や二酸化炭素排出の機能が低下したり、血液循環が悪化したりすると、身体が酸素不足に陥ります。
すると、身体はその不足を補おうとして呼吸が速く、浅くなり、息切れが起こります。
息切れは、重篤な心臓病が原因で起こることもあります。
特に、動悸と息切れが同時に起こる場合は、注意が必要です。
以下に、動悸と息切れを伴う場合に考えられる疾患を挙げます。
ストレス
強いストレスや不安を感じると、自律神経のバランスが乱れ、動悸や息切れが起こることがあります。
これは、パニック障害や不安障害の症状として現れることもあります。
心が不安定な状態が続くと、身体にも様々な症状が現れます。
深く息を吸ってみたり、リラックスできる環境を作ったりするなど、ご自身のペースで心身の安定を目指しましょう。
症状が改善しない場合は、一人で抱え込まず、心療内科などの専門医療機関にご相談ください。
運動(労作)
運動など身体を動かす際、心臓はより多くの血液を送り出すため、心拍数を上げます。
同時に、呼吸も速くなり、酸素を多く取り込もうとします。
そのため、運動中は一時的に動悸や息切れを感じることがありますが、これは正常な反応です。
ただし、過度な運動や、心臓や肺に問題がある場合は注意が必要です。
運動中にいつもと違う症状を感じたら、無理をせず休憩を取るようにしましょう。
心臓の異常・病気
心臓に異常や病気が起こると、動悸や息切れなどの症状が現れることがあります。
例えば、心房細動(不整脈の一種)、心不全(心臓が十分に血液を送り出せない状態)、弁膜症(心臓弁に異常がある状態)などが挙げられます。
心臓は、全身に血液を循環させるポンプの役割を担っています。
そのため、心臓に異常が起こると、全身に様々な影響を及ぼします。
動悸や息切れに加え、胸の痛み、めまい、失神などの症状が現れた場合は、速やかに循環器内科を受診することをおすすめします。
肺の異常・病気
呼吸器の異常や病気によって、動悸や息切れが起こることもあります。
肺炎、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺塞栓症(肺の血管が血のかたまりで詰まる病気)などが、その代表的な例です。
呼吸器は、身体に取り込む酸素と、排出する二酸化炭素のガス交換を担う重要な器官です。
そのため、呼吸器に異常が生じると、十分な酸素を取り込めなくなり、動悸や息切れなどの症状が現れます。
咳、痰、息苦しさ、発熱などの症状がみられる場合は、受診を検討しましょう。
貧血
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足している状態のことです。
赤血球は、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。
そのため、貧血になると、身体の各組織に十分な酸素を供給することができなくなり、動悸や息切れなどの症状が現れます。
貧血には、鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血など、様々な種類があります。
原因によって治療法が異なりますので、医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
息切れから考えられる病気
気管支喘息
気管支喘息は、アレルギー反応によって気道に炎症が起こり、気道が狭くなることで呼吸困難を引き起こす病気です。
発作が起こると、息を吐く際に気道が狭くなるため、息苦しさが強くなります。
咳や「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴を伴うこともあります。
症状が悪化する前に、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコの煙などに含まれる有害物質によって肺に炎症が起き、呼吸困難を引き起こす病気です。
長年の喫煙習慣があると、有害物質によって肺が慢性的に刺激され、細い気管支に炎症が起こります。
その結果、気道が狭くなり、咳や痰が多くなります。
さらに、肺胞(酸素と二酸化炭素の交換を行う小さな袋)の壁が破壊される肺気腫という状態に進行すると、呼吸機能が低下し、息切れが強くなります。
心不全
心臓は、血液を全身に送り出すポンプの役割を担っています。
このポンプ機能が低下してしまうのが、心不全です。
心不全になると、心臓が十分に血液を送り出せなくなるため、血液循環が悪くなり、全身の組織に酸素が行き渡らなくなります。
その結果、身体は酸素不足を補おうとして、呼吸数を増やしたり、心臓をより速く動かしたりしようとします。
そのため、動悸や息切れなどの症状が現れます。
不整脈
通常とは異なる脈のリズムを、不整脈といいます。
不整脈が起こると、脈が速くなったり遅くなったりするため、全身に十分な血液が送り届けられなくなり、めまいや立ちくらみ、息切れなどの症状が現れることがあります。
狭心症
狭心症とは、心臓の筋肉(心筋)に酸素を供給している冠動脈が、動脈硬化によって狭くなることで、心筋に十分な血液が供給されなくなる病気です。胸の痛みや圧迫感、息苦しさなどの症状が現れます。
間質性肺炎
肺胞と肺胞の間には、「間質」と呼ばれる組織があります。
間質性肺炎は、この間質に炎症や損傷が起こる病気です。
間質性肺炎になると、肺胞の壁が厚く硬くなってしまうため、血液が肺胞から酸素を取り込みにくくなり、息切れなどの症状が現れます。
肺がん
肺がんが進行すると、肺の広い範囲で酸素の取り込みが困難になり、息切れなどの症状が現れます。
喫煙習慣がある方や、過去にアスベスト(石綿)やコールタールを扱う作業に従事していた方は、肺がんのリスクが高いため、定期的な検査を受けるなど、注意が必要です。
貧血
貧血とは、血液中の赤血球が減少したり、赤血球に含まれるヘモグロビンというタンパク質が減少したりすることで、血液が酸素を十分に運べなくなる状態をいいます。
貧血になると、全身の臓器に十分な酸素が供給されなくなるため、息切れや動悸、めまいなどの症状が現れます。
腎不全
腎臓の機能が衰え、腎不全の状態になると、体内の水分バランスが崩れ、様々な問題を引き起こします。
尿として排出されるべき水分が体内に溜まり、むくみや体重増加、さらには心臓への負担増加による心不全のリスクも高まります。
また、本来、腎臓で濾過されるべき老廃物や毒素が血液中に蓄積し、全身の臓器に悪影響を及ぼします。
息切れの検査と治療法
息切れの検査方法
息切れの診断では、まず問診が重要です。
「いつ頃から息切れがあるか」「どういうときに息切れが起こるか」「安静で治まるか」「胸痛を伴うか」「むくみはないか」などの病歴が参考になります。
検査では血液検査、胸部レントゲン写真、心電図、酸素飽和度測定が一般的に行われます。
必要に応じて動脈血ガス分析、呼吸機能検査、胸部CT検査、心臓超音波検査(心エコー)も行うことがあります。
息切れの治療方法
息切れの治療方法は原因疾患に応じて異なります。
症状が軽度であれば薬物療法や呼吸療法が行われます。
症状が強い場合や酸素飽和度が低下している場合は酸素投与や人工呼吸器の使用が必要になる場合もあります。