- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?
- 睡眠時無呼吸症候群の症状
- 無呼吸は何秒以上が危険?
睡眠時無呼吸症候群の基準 - 睡眠時無呼吸症候群の原因
- 睡眠時無呼吸症候群にどんな人が
かかりやすい? - 睡眠時無呼吸症候群の治療方法
睡眠時無呼吸症候群
(SAS)とは?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、大きないびきを伴い、睡眠中に呼吸が何度も止まる病気です。
睡眠中に無呼吸が起こると、体は低酸素状態に陥ります。これが毎晩、しかも長期間にわたって続くと、心臓や血管の病気、生活習慣病のリスクが高まります。高血圧との関連は特に深く、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳卒中の発症とも関連付けられています。
また、低酸素状態になると、脳は防衛的に覚醒し呼吸を再開します。この繰り返しにより熟睡を妨げられ、慢性的な睡眠不足に陥ります。
その結果、「日中の強い眠気」「倦怠感」「起床時の頭重感」「気分の落ち込み」などが現れ、仕事や学業への集中力低下、さらには性格の変化さえ引き起こす可能性も示唆されています。
運転中の居眠りによる交通事故発生率は、SASでない方に比べ2.6倍以上にもなるという報告もあります。
このように、SASは日常生活に様々な支障をきたすだけでなく、個人の健康問題を超えて、社会全体の安全に関わる重要な病気と言えるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群の症状
睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状がない場合でも発症していることがあります。
- 日中に強い眠気に襲われることがある
- 就寝後、十分な睡眠をとったはずなのに、朝起きた時に頭痛、頭重感、倦怠感などが残っている
- 以前と比べて体重が増加し、顔つきが変わったと周囲から指摘される
- 睡眠中に呼吸が止まっていると、家族やパートナーから指摘されたことがある
- 会議中や運転中など、意識を保つべき場面で眠ってしまうことがある
- 毎晩のように大きないびきをかいている
- 若い頃から体重が増え続けている、あるいはメタボリックシンドロームの傾向がある
これらの症状は、SASのサインかもしれません。
ご自身の健康状態を把握するためにも、お気軽に当院にご相談ください。
主な症状【状況別】
就寝中
- いびきをかく
- いびきが一時的に止まった後、大きな呼吸音とともに再びいびきをかき始める
- 睡眠中に何度も目が覚めてしまう
- 呼吸が止まっている時がある
- 寝汗をかく
起床時
- 朝起きた時に頭痛がする
- 十分な睡眠時間を取っているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じる
- 目覚めが悪く、スッキリと起きられない
日中
- 慢性的な疲労感があり、常に疲れていると感じる
- 集中力が続かず、すぐに散漫になってしまう
- 特に理由もなく、強い倦怠感を覚える
- 日中に強い眠気に襲われることがある
無呼吸は何秒以上が危険?
睡眠時無呼吸症候群の基準
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に何度も呼吸が止まる病気で、重症になると20~40秒もの間、呼吸が停止することもあります。
基準としては、10秒以上呼吸が止まる「無呼吸」や、呼吸が弱くなる「低呼吸」が、1時間あたり5回以上繰り返される状態と医学的には定義されています。
大きないびきの後、突然静かになり呼吸が止まり、その後「グワッ」「ガガ!」という激しいいびきや、「ヒュー」という空気の抜ける音とともに呼吸が再開する場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いと言えるでしょう。
無呼吸になると、血液中の酸素量が低下し、心臓や血管に大きな負担がかかります。
長期間放置すると、高血圧、心臓病、脳卒中、最悪の場合は突然死のリスクも高まります。
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸によって脳波が覚醒するため、深い睡眠を妨げます。
また、無呼吸により血液中の酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が上昇することで、心臓や脳などの臓器に悪影響を及ぼします。
その結果、日中に強い眠気や倦怠感、集中力低下、頭痛、めまい、冷や汗、動悸などの症状が現れます。
自覚症状がない場合でも、適切な治療が必要です。
ご自身やご家族にいびきや無呼吸が気になる方は、お気軽に当院にご相談ください。
睡眠時無呼吸症候群の原因
睡眠時無呼吸症候群は、大きく分けて二つのタイプに分類されます。
一つは「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」で、睡眠中に気道が塞がることで無呼吸が起こります。
もう一つは「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」で、脳からの呼吸指令が正常に伝わらなくなることが原因で無呼吸が起こります。
当院では、それぞれのタイプに合わせた適切な検査と治療を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
閉塞性睡眠時無呼吸タイプ
睡眠時無呼吸症候群の多くは、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」と呼ばれるタイプです。
OSAは、睡眠中に気道が物理的に狭くなる、あるいは塞がってしまうことで無呼吸が起こります。
気道を狭くする原因としては、首やのど回りへの脂肪の蓄積、扁桃腺の肥大、舌の付け根(舌根)の沈下、口蓋垂(のどちんこ)の肥大、軟口蓋のたるみなどが挙げられます。
立っている時は問題なくても、仰向けに寝ると重力によってこれらの組織が気道を圧迫し、狭窄や閉塞を引き起こします。
特に、日本人は骨格的に顎が小さく後退している場合が多く、欧米人に比べて気道が狭くなりやすい傾向があります。
また、歯並びが悪いと舌が正常な位置に収まらず、気道を圧迫してしまうこともあります。
いびきは、狭くなった気道を空気が通るときに発生する音です。
「仰向けになると大きないびきをかくが、横向きになると静かになる」という場合は、OSAの可能性が高いと言えるでしょう。
睡眠中は、全身の筋肉がリラックスして気道を支える力が弱まるため、OSAのリスクがさらに高まります。
中枢性睡眠時無呼吸タイプ
「中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)」は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは異なり、気道が塞がっていないにもかかわらず、脳からの呼吸指令が正しく伝わらなくなることで無呼吸が起こります。
OSAの場合、気道閉塞による低酸素状態を感知した脳が、呼吸を再開しようと指令を出します。
しかしCSAでは、この呼吸指令そのものが出なくなるため、体が呼吸を再開しようとする動きが見られません。
CSAは、特に心不全との関連が指摘されています。
慢性心不全によって呼吸を調節する神経系に異常が生じ、CSAを引き起こすと考えられています。
また、CSAによる無呼吸がさらに心不全を悪化させるという悪循環も懸念されています。
睡眠時無呼吸症候群に
どんな人がかかりやすい?
睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴と傾向は以下の通りです。
体型
睡眠時無呼吸症候群の最大の原因は、肥満です。
特に、20歳の頃に比べて10kg以上体重が増加した方は、注意が必要です。
肥満になると、全身の脂肪が増加するだけでなく、舌やのど周辺にも脂肪が蓄積します。
その結果、気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
性別
男性は、女性の2~3倍、睡眠時無呼吸症候群に罹患しやすいと言われています。
これは、男性の方が女性に比べて、上半身、特に腹部周辺に脂肪がつきやすいことが一因として考えられます。
顎や喉の周囲に脂肪が蓄積すると、気道が圧迫されやすくなるため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高まります。
生活習慣
飲酒、喫煙、睡眠薬の使用も、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める要因となります。
特に、就寝前の飲酒は、アルコールの作用によって喉の筋肉が弛緩し、気道が狭くなるため睡眠時無呼吸症候群のリスクがさらに高まります。
喫煙は、気道の炎症を引き起こし、閉塞性睡眠時無呼吸症候群を悪化させる可能性があります。
睡眠薬も、筋肉を弛緩させる作用があるため、睡眠時無呼吸症候群のリスクを高める可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の予防、症状改善のためにも、生活習慣の見直しも検討してみましょう。
骨格・見た目
肥満体型や男性以外でも、睡眠時無呼吸症候群のリスクが高い方がいます。
生まれつき顎や喉の構造が小さい方は、気道が狭くなりやすく、睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいため注意が必要です。
顎が小さい、顔が小さい、二重あごである、舌や舌の付け根が大きい方は、睡眠時無呼吸症候群になる可能性が高くなります。
年齢
女性ホルモンには、気道を広げる働きがあるため、一般的に女性は男性に比べて睡眠時無呼吸症候群に罹りにくいと言われています。
しかし、閉経を迎えると女性ホルモンの分泌が減少し、睡眠時無呼吸症候群の発症リスクが高まります。
閉経後の女性は、閉経前と比べてSASの発症率が約3倍になり、男性とほぼ同程度になるとも言われています。
また、加齢に伴い、男女ともに睡眠時無呼吸症候群のリスクは高まります。
これは、年齢とともに喉や首周りの筋力が低下し、舌や軟口蓋が気道を塞ぎやすくなるためです。
特に、40代以降の男性は、脂肪がつきやすくなることも重なり、リスクがさらに高まります。中年以降に多い病気ですが、もちろん若い世代でも発症する可能性はあります。
扁桃肥大
過去に風邪や扁桃炎などで医療機関を受診した際、「扁桃腺が大きい」と指摘された経験のある方は、睡眠時無呼吸症候群のリスクに注意が必要です。
扁桃腺が肥大していると、気道が狭くなり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こす可能性があります。
一般的に、扁桃腺は5~7歳頃に最も大きくなり、その後は徐々に縮小していく傾向があります。
しかし、中には扁桃腺が縮小せず、肥大したまま成人になるケースもあり、睡眠時無呼吸症候群の原因となることがあります。
ご家族がいびきや無呼吸を繰り返す場合は、早めを受診するようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
睡眠時無呼吸症候群の治療には、症状や重症度、生活習慣などに応じて、患者様一人ひとりに最適な方法を選択する必要があります。
治療期間が長引く場合もあるため、治療を開始する前に、医師と十分に話し合い、ご自身の病気や治療方針について理解を深めておくことが大切です。
ご家族やパートナーにも、睡眠時無呼吸症候群についての理解と協力を得ながら、治療に取り組んでいきましょう。
CPAP療法
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療法として、最も広く普及しているのがCPAP療法です。
CPAP療法とは、鼻に装着した専用マスクから空気を送り込むことで、気道を常に陽圧に保ち、気道の閉塞を防ぐ治療法です。
治療開始時は、適切な圧力設定やマスクの使用方法などを確認するため、医療機関に一泊入院していただく場合があります。
CPAP療法の効果を最大限に引き出すためには、毎晩、正しくマスクを装着することが重要です。
装着感や使用方法について不安な点があれば、遠慮なく医師やスタッフにご相談ください。
マウスピース療法
睡眠時無呼吸症候群の治療法の一つに、マウスピースを用いた治療があります。
マウスピースは、就寝時に装着することで、下顎を少し前方に押し出し、気道を広げる効果があります。
当院では、マウスピース治療をご希望の方には、近隣の歯科口腔外科をご紹介しております。
保険適用で製作可能ですので、ご希望の方はお申し出ください。
マウスピースは、特に閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)に効果が期待できますが、重症度によっては十分な効果が得られない場合があります。
医師とよく相談し、ご自身の症状に最適な治療法を選択することが大切です。