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胸の痛み

胸の痛みの3つのパターン

胸の痛みの3つのパターン胸の痛みには様々な種類がありますが、大きく3つのパターンに分類し、それぞれの特徴について解説します。

胸の表面部分の痛み

「チクチクする痛み」や「刺すような痛み」といった表現で表される胸の表面に生じる痛みは、多くは肺よりも外側にある胸壁の神経や筋肉の炎症、外傷、帯状疱疹などが原因となります。

胸の深い部分の痛み

「胸の深いところで生じる痛み」は、内臓の痛みを生じており、心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓症などが原因となります。

胸以外が原因による痛み

食道、胃、十二指腸などの消化器疾患、肺炎(胸膜炎)や気胸といった呼吸器疾患、骨や筋肉の障害など、胸以外の原因によって引き起こされる痛みが、胸の痛みとして感じられることがあります。

危険な胸の痛みの症状とは?

胸には心臓や肺などの重要な臓器があるため、その付近に痛みを感じると不安になるかと思います。
胸の痛みが必ずしも重篤な病気のサインとは限りませんが、次のような症状が現れた場合は注意が必要です。

危険な胸の痛みの症状とは?
  • 突然、胸が締め付けられるような激しい痛み
  • 胸の上に重い物を乗せられたような圧迫感
  • 胸が焼け付くような痛み(灼熱感)
  • 前胸部から背中にかけて広がるような強い痛み
  • 嘔吐、呼吸困難、冷や汗、意識障害、失神を伴う胸の痛み

これらの症状が見られる場合は、緊急を要することがあります。

胸のどこが痛い?
痛みのセルフチェック

胸痛が生じた際は、可能な範囲で以下の項目をメモしておき、受診時に医師にお伝えください。

痛みの場所

左胸部・前胸部・背中・首や肩など胸から離れた場所・局所的

痛みの持続時間

瞬間・数分間・20分以上・数時間かそれ以上

痛みの内容

刺すような痛み・鈍い痛み・圧迫されるような痛み・締め付けられるような痛み

痛みが起こった状況

動いた時・安静時・体位を変えた時・呼吸との関係・食前食後

胸の痛み以外の症状

呼吸困難・発熱・冷や汗・吐き気・嘔吐など

胸の痛みの原因と
考えられる病気

胸の痛みがある場合は、以下の病気の可能性があります。

心臓や血管の病気

虚血性心疾患
(狭心症・心筋梗塞など)

冠動脈が狭窄し、心筋への血液供給が不足することで起こる病気を狭心症と言います。
さらに冠動脈が完全に閉塞し、心筋が壊死してしまう病気を心筋梗塞と言います。
いずれも、胸の痛みや圧迫感を伴う発作が起こるのが特徴です。痛みが左肩、左腕、顎、背中、腹部などに広がることもあります。
心筋梗塞の場合は、心筋が壊死することで、呼吸困難、意識消失、不整脈、心臓破裂などを引き起こす可能性があり、命に関わる危険性があります。

狭心症についてはこちら

大動脈解離

大動脈解離とは、大動脈の内膜に亀裂が入り、それが急速に広がってしまう病気です。
突然の胸の痛みや背中の痛みが起こり、内膜の亀裂の広がりとともに痛む場所が変わっていくのが特徴です。

貧血

貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビン量が減少した状態です。
胸の痛みに加えて、動悸やめまいなどが現れることがあります。

肺の病気

肺炎

肺炎は、細菌やウイルス、カビなどが原因で肺に炎症が起こる病気です。
咳、痰、ゼーゼー、ヒューヒューといった呼吸音(喘鳴)、息切れ、発熱などの症状が現れます。
体力や免疫力が低下していると、特に発症しやすくなります。
抗菌薬などで治療しますが、放置すると重症化する恐れがあります。
肺炎が進行し、肺を覆う膜(胸膜)に炎症が広がると(胸膜炎)、ピリピリとした胸の痛みが現れます。

肺がん

肺や気管支の細胞から発生する癌を「原発性肺癌」、大腸癌など他の臓器の癌が肺に転移したものを「転移性肺癌」と呼びます。
悪性腫瘍である癌は、周囲の正常な組織に侵入し、破壊しながら増殖・転移するのが特徴です。
肺がんには、肺腺癌、小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、大細胞癌など様々な種類があります。
また、診断時の進行度によって、早期から末期まであり、全身への影響や治療法が異なります。
肺がんでは、癌そのものによる胸の痛みのほか、癌性胸膜炎や骨転移などによって胸痛が生じることがあります。

気肺

気胸は、肺に穴が開いて空気が漏れることで、肺がしぼんでしまう病気です。
原因としては、若く痩せ型の男性に多い「自然気胸」、交通事故などの外傷が原因となる「外傷性気胸」、稀に女性の月経周期に合わせて起こる「月経随伴性気胸」などがあります。
一般的に、突然の胸の痛みに続いて、咳や呼吸困難などの症状が現れます。
また、漏れた空気が胸腔内に貯留し、心臓や大静脈を圧迫する「緊張性気胸」になると、血圧低下やショック状態を引き起こし、治療が遅れると命に関わる危険性があります。

胸膜炎

胸膜炎とは、肺の表面を覆う薄い膜(胸膜)に炎症が起こる病気です。
肺炎球菌や結核菌などの感染によるもの(細菌性胸膜炎、結核性胸膜炎、ウイルス性胸膜炎)、悪性腫瘍の転移によるもの(癌性胸膜炎)、膠原病によるものなど、様々な原因があります。
中でも、細菌性胸膜炎と癌性胸膜炎が多くみられます。
症状としては、咳、発熱、呼吸困難に加えて、深呼吸をするたびにピリピリと感じる胸の痛みが特徴です。
多くの場合、抗菌薬によって症状が改善しますが、胸腔ドレナージや手術が必要となるケースもあります。

肺塞栓
(エコノミークラス症候群)

肺塞栓症とは、肺の動脈に血液の塊(血栓)が詰まってしまう病気です。
多くは、足の静脈にできた血栓(深部静脈血栓症)が原因で起こります。
長時間座りっぱなしの状態や、同じ姿勢を続けることで血流が悪くなり、血栓ができやすくなります。
症状は、体を動かした時の息苦しさから始まり、胸の痛み、胸の不快感や圧迫感、血痰、足のむくみなどが現れ、重症化すると呼吸困難に陥ることもあります。

悪性胸膜中皮腫

悪性胸膜中皮腫は、肺の表面を覆う薄い膜(胸膜)にできる稀な悪性腫瘍です。
発症には、アスベスト(石綿)への曝露が深く関わっていることが知られており、アスベストを吸い込んでから平均40年程度で発症すると言われています。
日本では1970年代にアスベストの輸入が禁止されましたが、使用が全面的に禁止されたのはつい最近のことです。
症状としては、胸の痛みや咳、大量の胸水による呼吸困難や胸部圧迫感などがありますが、初期には自覚症状が現れにくいため、早期発見が難しい病気です。
そのため、過去にアスベストに曝露した経験のある方は、定期的な胸部X線検査や胸部CT検査などの検診を受けることが推奨されます。

骨・神経の病気

肋骨の骨折

過度な運動や事故、激しい咳などによって肋骨が骨折すると、痛みが生じます。
安静にしている時は鈍痛ですが、体を動かしたり、咳やくしゃみをしたり、深呼吸をしたりすると痛みが強くなります。

帯状疱疹・肋間神経痛

肋間神経痛は、肋間神経が障害されることで起こります。
多くは片側に、突然鋭い痛みが走り、咳やくしゃみ、深呼吸などで痛みが強くなります。
原因の一つとして、水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされる「帯状疱疹」が挙げられます。
免疫力が低下した際に、神経節に潜んでいたウイルスが再び活性化することで発症します。
帯状疱疹では、皮膚に水ぶくれ(水疱)が現れ、その部分に一致して激しい痛みが生じます。

その他の原因

ストレス・生活習慣

ストレス・生活習慣ストレス、食生活の乱れ、運動不足、喫煙、肥満などは、動脈硬化を促進する要因となります。動脈硬化によって冠動脈が狭窄すると、心筋への血流が悪くなり、胸痛が生じることがあります。

胸が痛い場合の治療方法

胸が痛い場合の治療方法胸痛の治療は、その原因となる病気を特定し、治療することが基本となります。
診断が確定するまでの間、アセトアミノフェンやオピオイドなどの鎮痛剤を使用して、一時的に痛みを抑えることもあります。
多くの場合、原因となる病気の治療とともに胸痛も改善していきますが、安静時狭心症や労作性狭心症のように、胸痛と付き合いながら治療を続けるケースもあります。
これらの狭心症は、血管拡張薬やベータ遮断薬などを用いて治療しますが、治療中でも胸痛発作が起こることがあります。
発作時には、ニトログリセリンという血管拡張薬を舌の下に投与することで、症状が緩和されます。
ニトログリセリンは狭心症の胸痛に有効ですが、効果が得られにくくなったり、使用する頻度が増えている場合は、心筋梗塞に移行しやすい不安定狭心症の可能性があります。
ニトログリセリンの使用頻度が多い場合や、1回の発作に3回使用しても症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。
胸痛の原因となる病気は、再発しやすいものが多いため、注意が必要です。
胸痛はありふれた症状ですが、命に関わる病気が潜んでいる可能性もあります。

「たいしたことないだろう」と安易に考えず、痛みが続く場合や繰り返す場合は、自己判断せずに医師に相談するようにしましょう。